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翌日の朝、目が覚めると怒りは、すっかり収まっていた。言い過ぎたと思い、朝食の準備をしている鈴香の背中から、緩く抱きつくが、払い除けられた。
「鈴香、昨日はごめんね」
「どうせ私は雨女ですから……」
三人で朝食をとり、会社に出勤だ。昼休みに彼女が作ってくれた弁当を食べた。いつもより、おかずの盛り付けが粗い気もする。
珍しく定時で仕事が終わり、帰路につく。自宅のドアは恐る恐る開けた。私は笑顔になるが、鈴香は表情がない。
「お帰りなさい、パパ、早く帰って来てくれて良かった」
怒りは収まっているようだ。彼女は私に向って来る、翼の前で両膝に手をつく。翼と目線を合わせる。
「翼、約束どおり、パパにしかってもらうからね。パパ、翼がね、幼稚園の入園式に雨が降ると嫌で”入園式にママは来ないで”って私に言ったの、いい、翼、パパからしっかり怒ってもらうからね」
鈴香の感情は、翼ではなく私に対するモノなのかもしれない。私は、ほおをぷいっと演技っぽく膨らませた。屈みながら、翼の顔をのぞく
「翼、どうして、ママに入園式に来ないでって言ったの?」
「だって、パパが入園式にママが大雨を降らすって言った……」
予想の範囲の答えだ。しかし、私は話を続ける。
「パパはそんなことを言ってないよ? ママに入園式に来ないは、ゼッタイに言っては、いけないことだよ。翼、ママにごめんなさいをして」
「パパ、ママのこと『アメオンナ』と言ったよ」
「言ってないよ。翼の勘違いだよー」
謝る翼の横で、私は“雨女”など余計なことを口走った。しかも、自分が言ってないことにしたのを、後悔していた。
入園式は四月九日。そして、ドン大統領の歓迎レセプションはその翌日、四月十日だ。会社は忙しく、息子の入園式で休むなど言える雰囲気ではない。
百億円以上の売り上げで会社に貢献したのだ。自分へのご褒美として、仮病を使い午前中だけ休みむことにした。頬が軽く強張ったままの鈴香と相談する。同僚には申し訳ないが、入園式には家族三人で行くことに決めた。
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