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小さい頃から身の回りで不思議な事ばかり起きてきた。
保育園でボヤ騒ぎに巻き込まれたり、海で溺れてしまったら水位が下がり助かったり、山で土砂崩れにあったときも奇跡的に無傷で生還した。
こんなことが度々、起こる毎日を過ごしてきたが、僕自身としては大きな事故もなく、友人にも恵まれ慎ましくも穏やかな日々を過ごしてきたと思う。
そんなある日、クラスメイトにこう言われた。
「あんたの不幸体質をカバーするのも疲れたから、一旦、魔法医療所に行ってくれない?」
金色の髪を二つに結び、ややキツめの鋭い目は海と同じく青色で、モデルのような美しい顔立ちと身体つきをしている。親が外国人とのハーフで自分はクウォータと言う。
さらに言えば、彼女は僕の幼馴染であり、魔女の血を引く魔女見習いだが、クラスには彼女の他にも何人か魔女や魔法使い見習いが存在する。
ここ数百年の間に、科学を発展させる人間と魔法を発展させる魔法使いたちの間で協定が結ばれ、今ではお互いの生活圏で普通の友好関係を結ぶ間柄になっている。
因みに僕は魔法使いでもなく、化学にも流通していない一般人以下の凡人だ。
しかも不幸体質らしい。
「不幸体質って治るものなの?」
「はあ? 治るとか治らないじゃなくて体質なんだから、もっと自分はこういう体質があるんだって自覚して予防していってほしいんだけど? まずは、あんたのそのぼんやりした性格を叩き治さない限りずっと不幸に見舞われるんじゃない?
目の前で死人が出るのだけは勘弁だから、ずっと見守ってあげてたけど、もう高校生なんだから、自分のケツは自分で拭いなさいよね」
フンッとつっけんどうに話す彼女に、僕は席を立ち、眉を寄せた。
「瑞希さん」
「な、なによ? 文句でもあるわけ」
「女の子が“ケツ”なんて言っちゃだめだよ?」
「――――っ、うるさいわね! そんなの人の勝手でしょ! そんなことはいいから、さっさと病院にでも行きなさい!!」
顔を真っ赤にさせて怒る瑞希さんに、僕は何かまずいことを言ってしまったのだろうかと首を傾げた。
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