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分厚い雲が空を覆い尽くし、生温い風が教室を吹き抜ける。
外周をしている運動部の掛け声とと演劇部だか合唱部だかの発声練習が聞こえる中、俺はなにが悲しくて家庭科部員(男)の勧誘を受けているのだろうか。
「だからね!家庭科部には俺しか居ないから
もう廃部寸前なんだよ!だから宙見くんに入って欲しいんだよ!お願い!このとーり!幽霊部員でもいいから!」
「幽霊部員なら…別にいいけどさ、家庭科部って普段なにやってんの?裁縫とか?」
「裁縫はあんまり得意じゃないからやらないんだよね。基本は料理作ったりとかだよ!」
「…ごめん」
「えっ?」
「やっぱ無理。他あたって」
「ま、待ってよ!」
「ごめん」
捕まらないように鞄を素早く背負って教室を出た。
彼には悪いが、どうしても調理系の部活に入るのはできなかった。
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