ご飯の話

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「待てって!」 あいつが追いかけてきて俺を呼び止めるようとする。 「俺、飯田弘人!だいたい家庭科室にいるから!」 「…」 俺が何も言わずにその場を去ろうとすると飯田が何かを投げてよこした。 「これっ!俺が作ったやつ!食えよ!絶対に家庭科部入りたくなっから!待ってるからな!」 反射でキャッチした袋を鞄に押し込んで、俺は何も言わずに逃げるようにその場を立ち去った。 後から思えば、少し焦りすぎていたかもしれない。学校が見えなくなるほどの距離を全力で走った。 もう良いかと足を止めると、走っているうちは気づかなかった疲労を感じる。 肩で息をしてると、散歩中の犬が俺の周りを匂いを嗅ぎながらうろうろと回りだした。 飼い主さんから慌てて謝罪をされて犬がクッキーの香りにつられていたのかと気づき、取り出してみた。 バターの香りが辺りに広がった。 「大丈夫です。多分、これにつられちゃったんだと思うんで」 あまりにも美味そうな匂いなので、帰ったら食べてみようかなんて珍しく思った。
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