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家に帰って鞄を開けると、雑に押し込んだせいで、いくつか欠けているクッキーが出てきた。
ほんのりとバターの香りが漂うクッキーを口元に運ぼうとするが手が震える。
「…くっそ」
俺はクッキーの斜め左辺りを眺めて舌打ちをした。
俺だって、食べたくないわけではない。
だが、手と食べ物の距離に反比例するように拒絶反応が強くなる。
捨てるのもためらわれるので、袋にまた詰めて明日返そうかと鞄に詰めた。
「家庭科部…かぁ」
ずっと俺を勧誘していた飯田弘人の真剣な顔が浮かぶ。
手についたクッキーの甘い香りが鼻腔をくすぐる。
美味しそうな匂いだ。
そんな事を思ったが、食べようとは思えなかった。
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