その3

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その3

 なんでコイツら今日はやたらにツッコミ入れてくるわけ、とミカは頭にきてサトミとケイコを完全無視して窓を眺めはじめた。そうしてしばらく窓を眺めていると後ろから「山田さん」と呼ぶ声がきこえた。ミカが振り返る。呼んでいたのはいつの間にか隣に座っていた山田だった。  ミカはハッとして山田の方を見て言った。 「いつも言ってるでしょ!人を名前で呼ぶなって!」  今日のミカは気が立っていた。だからいつもの山田だったらそれを察知してミカから顔を背けただろう。だが今日の山田は違かった。ずっとミカの顔を見つめている。  おい、なにコイツ?なんかヤバくなっちゃったの?ミカは助けを求めてサトミとケイコを探したが二人はとっくに自席に戻っている。山田がいつまでも自分を見ているのでミカは頭にきてこう言った。 「いつまでもなに人の顔見てんのよ!えっ、なんか用でもあんの?」  山田はミカのつっけんどんな口調に思わず怯んだが、一息入れてこう言った。 「ずっと君のこと心配してたんだよ。雨の中ずぶ濡れで走っちゃってさ。怪我だってしてるだろ。だから」 「大きなお世話です!って大体アンタなんでそんな濡れてんのよ!傘持ってたでしょ?まさかコンビニに置き忘れたとかそんなことないよね?アンタのは折り畳み傘だし」  山田はまた黙ってしまった。だけど何か言いたそうにミカを見ている。ミカは山田の話に思わず反応したのを後悔した。ああめんどくさ!コイツに話しかけるんじゃなかった!黙ってるなら永遠に黙っててと思いながら思わず山田をチラ見すると、山田もミカをチラ見してたので思わず目が合ってしまった。  山田の顔は真剣そのものだったから今度はミカが怯んでしまった。一息ついて意を決したように山田がミカに言った。 「君にあんなことしといて俺だけ傘呑気にさして登校なんて出来ないよ。ホントならお詫びに君に傘貸して俺が濡れてくるはずだったんだから」 「バッカじゃないの!」  ミカの突然の大声に教室がシンとなる。ミカはヤバいと山田を無視することにした。バカ!なんで怒鳴っちゃったんだろう。こんなやつ無視しとけばよかったのに。みんなに変な風に思われたらどうしよう。ハッキリ言って私はこんなやつ大嫌いなんですからね。うすのろ!歩く芋虫!  そしてミカは自分の気持ちを確認ように山田の方を見たら山田の手の甲が目に入った。朝ぶつかった時に出来た傷が持っと酷くなっている。バッカじゃないの!なんで絆創膏貼らないのよ!ミカはなんだか自分が酷いことをしているようなそんな後ろめたい気持ちになっていた。
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