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その1
6月は雨が多いからみんな一斉に不機嫌になる。登校途中のミカもそうだった。家を出るときは小雨だった雨は駅から降りたときにはすでに本降りになっていた。ミカもこの時期に不機嫌になる事が多い。そしてこんなときにかぎって人をイライラさせるようなことが起こるのだ。
山田ミカが駅から降り傘を差して歩こうとすると、前を歩いていた男子学生が急に立ち止まり、そのせいでミカは男子学生にぶつかってしまった。男子学生はぶつかった衝撃で前につんのめって倒れてしまい。ミカも傘の骨が顔に当たったせいでうずくまってしまった。
しばらくしてミカは立ち上がり、起き上がろうとしていた男子学生に文句を言ってやろうと顔をみると、ぶつかった男子学生は、同じクラスのしかも隣の席に座っている山田だったのだ。ミカは、朝から最悪!と腹が立って山田を怒鳴りつけた。
「このバカ!なんで急に立ち止まんのよ!アンタのせいで顔に傷ついちゃったじゃない!」
山田はビックリして顔をあげると、そこにいつもよりも不機嫌なミカがいた。頬に微かな擦り傷が出来ている。山田は急いで立ち上がり、ミカの顔を見詰めた。大丈夫と声をかけようとした途端、ミカがまた怒鳴りだした。
「見んなよ!キモいから!それより傘どうしてくれんのよ!アンタのせいで骨が折れちゃったじゃん!だいたい、なんで急に止まんのよ!アンタ人の迷惑考えたことあんの?」
「ゴメン、傘さそうとしてバッグみたら、折り畳み傘がなかったから探そうとしたんだ」
「だからそんなことは場所考えてやるべきことでしょ!この人混みの多いとこでそんな事なんでやんのよ!」
ミカは山田にはかまってられないと、早く学校に向かおうと傘をさそうとしたが、骨組みが曲がっていて傘が開かない、ミカの傘は壊れてしまったようだ。
「あ~あ!最悪!もう全部アンタのせいだからね!」
「かばんに折り畳み傘あったんだ。よかったら使ってよ!」
学校まで駆け足で行こうとすミカに山田が後ろから言った。ミカが振り向くと山田が傘を差して立っている。傘を持つ右手の甲に酷い擦り傷が出来ていて血が滲んでいる。
「いらないよ!」
とミカは言い捨てて、呆然と立ち尽くしている山田を一瞬見ると、雨が降る中、学校まで一目散に駆けて行った。
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