いつか、三時の向こう側

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　空っぽな平日を抜けて、そしてまた土曜日が来る。
　土曜日の三時、大好きなみんながやって来る時間が訪れる。
　私の中で、三日前にお見舞いに来た母に言われた言葉が、いつまでもリフレインしていた。

『杏樹ちゃん。淋しいのはわかる。辛いのはわかる。……でも、杏樹ちゃんは大人にならないといけないの、そうでしょ。いつまでも“遠足に行きたい”なんて言ってたら、太陽君達が困っちゃうでしょ？』

　彼女の言葉は正論だった。むしろ、私が傷つくのをわかった上で言ってくれていたのだろう。

『大人になるってのは、心も身体もよ。……あとどうせ数年しか生きられないから、みたいな気持ちでいてどうするの。瞬君が言ってくれたのは、つまりそういうことなんじゃないの？』

　分かっている。――分かっていた。
　私は諦めて、時間を止めてはいけないのだということくらいは。
　そんなこと、家族も友達もみんな望んでいないのだということくらいは。
　そして、私がみんなにきちんと伝えるべきことが、何であるのかということを。

「杏樹ー！元気かー？来てやったぞ、ほら喜ぶがいいー！」

　そしてまた、ガラガラと引き戸が開く。
　幸せで楽しい、笑顔に溢れた“三時”が始まる。