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いつか、三時の向こう側
土曜日は、私にとって特別だ。
何故なら三時になると、毎週私の病室を訪れてくれる友達がいるからである。小学校でいつも一緒だったみんな。私にとって、家族と同じくらい大好きな仲間達が。
「杏樹ー!今日も遊びに来てやったぞ、感謝しろ感謝!」
がらがらがら、と引き戸が開いて入ってくるのは、私がクラスで一番仲の良い友人三人である。
今声をかけてくれたのが、太陽。クラスで誰よりも元気でみんなの人気者、ちょっと長めの髪があっちこっちにハネているのが特徴の少年である。
「感謝しろはないだろー?杏樹ちゃんだって好きでココにいるわけじゃないんだからね?」
そうやって太陽を窘めるのは、姉貴肌の璃々。男の子達よりも背が高くて力持ち、喧嘩も強い頼れる女の子だ。その反面、長い髪には可愛いお花のついた髪飾りをつけていて、結構女の子らしくて可愛い一面もあるのである。
「璃々。無理だから。太陽に気遣いとかできるわけないから、諦めよう」
そして最後の一人が、とっても頭のいい男の子の瞬。成績優秀でクールだけれど、けして気取ってない。受験があるので今は凄く大変な時期なはずなのに、みんなにもちゃんと勉強を教えてくれるし、困っている人を見過ごしたりもしない。そしてしれっと、結構なイケメン。太陽とは別の層で人気のある少年だ。
「いいよいいよ、私は気にしてないから!いつも三人が遊びに来てくれるだけで嬉しいから!」
私はそんな彼らのコントじみたやり取りが面白くて、いつも笑ってしまうのである。
私が難病で入院してからずっと、彼らは土曜日の三時になると“おやつタイム”と称して私の病室を訪れてくれる。難しい病気ではあったものの、幸運だったのは食事制限がそこまで厳しくなかったことだろうか。甘いものやカロリーの高いものを食べ過ぎてはいけないが、それでも少し貰ったお菓子を食べるだけなら許されている。
なので彼らはいつも、“今一番美味しいと思っているお菓子”をそれぞれひとつずつ持参して、私に提供してくれるのだ。そして、雑談したりトランプをしたりして帰っていく。それが、私の土曜日の流れだ。私よりずっと友達も多くて忙しい筈の彼らだというのに、土曜日三時の約束を欠かしたことは殆どないからすごい話である。せいぜい、急な法事が入ったとか、三人の誰かが熱を出して寝込んだとか、それくらいの理由での欠席が数回あったかなかったかといった具合だ。
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