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梦月の魂魄は、大君の肉体の全てを奪い取っている。よって梦月は皮膚を通して熱や痛みを人間と同様に感じているわけだが、今日ほどそれを恨んだ事はなかった。
(なんだっ…これは…!!)
主上から与えられる刺激に、身体がどうしても反応してしまう。身体が嫌でも熱くなるような、心を鷲掴みにされているような、そんな刺激に抗えない。
その上、今日の主上は何時もより遠慮が無かった。彼は煽情的な目付きのまま、梦月の首筋を舌先で艶かしくなぞり、舌先が耳の付け根に到達すると、淫らな水音を立てながら耳を執拗に甘噛し、舌で甘く愛撫する。
それだけでは留まらず、主上の左手は梦月の紅の長袴の緒を引き、袴を脱がせにかかっていた。
「やっ…!!」
この様な恥ずかしい声を出したくないのに。
今すぐにでも主上を止めたいと思っているのに。
もっと抵抗したいのに。
体が、言うことを聞かない。
力が抜けて、与えられる快楽から逃げられない。
初めての感覚に梦月は戸惑い、顔を真っ赤にしたまま何とか抜け出そうと藻掻いた。しかし、藻掻けば藻掻くほど衣装が一層乱れ、より官能的な姿に成り果てていく。
「主上、おやめください!離して…!!」
「…今日はそなたの言うことはきかぬ。」
梦月の髪を指に絡めて、主上は余裕の無い表情で言い切った。そして、また有無を言わさず深い口付けをする。そうしている間にも紅の長袴の緒は完全に解かれ、乱れた小袖の裾から、梦月の白く滑らかな肌の太腿が顔を覗かせた。
柔らかな太腿をゆっくりと撫でる主上の骨張った手が、つつつ…と足の付根に向かって伸びていく。その厭らしく甘やかな感覚が、ぞわぞわと体中を駆け巡り、梦月の体が小さく跳ねた。
「ぁっ……、」
「常に澄ましているそなたでも、そのような顔をするのだな。」
主上がゆっくりと唇を離すと、お互いの唾液が混ざり合った糸が細く繋がり、それは主上の唇を艶やかに濡らした。梦月は羞恥で目を合わせることもできない。
許されないなのに。
このようなことをしては、いけないのに。
「お願いです、これ以上はお止め下さいっ…」
強く言い返したくても、うまく声が出ない。か細く、震えるような声しか出ない。
何故だ。
体が言うことを聞かない。
体が、蕩けてどうにかなってしまいそうだ。
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