1085人が本棚に入れています
本棚に追加
/447ページ
淡々とした様子で一切取り乱すこと無く、嫉妬の「し」の字も見せない梦月。ここまで平然とされてしまうと、主上としては寧ろ面白くない。少しくらい悲しげな様子を見せてくれても良いだろうに。愛おしい、好きだと思っているのは結局自分だけなのかーーー……
「………〜〜〜っ!」
小葵文様の真っ白な御引直衣の袖を勢い良く払い、主上は梦月の手から撥を取り上げた。驚いた梦月が目を丸くして顔をあげると、主上は初な青年のように頬を赤く染め、拗ねた様子で梦月をじっと見つめている。
「主上、」
「っ、皆下がれ。朕は女御と二人きりで話す!」
「なっ、」
ぎょっとする梦月とは対象的に女房達は最早慣れた様子であり、「はいはい、お好きなだけどうぞ。」と言わんばかりの表情でさっさとその場から下がってしまった。あっさりと主上と二人きりにされた梦月は、主上の手から撥を奪い返そうとする。
「主上、子供っぽい真似はおやめ下さいませ!」
「いやだっ、」
梦月の手の届かない高さまで撥を掲げる主上。それを梦月が取り返そうと腕を伸ばした瞬間、主上は梦月の体を畳の上に押し倒した。
「主上…!?っ、おかみ…!!お離し下さい!!」
梦月は髪を乱しながら何とか主上から離れようとするが、体格と力は主上の方が明らかに勝っているため、彼の拘束から抜け出せる筈も無い。そうして互いの衣装が入り乱れていく様は何とも艶めかしく、主上はその勢いのままに梦月の唇を強引に奪った。
「っ…!!」
梦月の唇を貪るは、主上の柔らかな唇と熱い舌。何度も何度も角度を変えて重ね合い、深く淫らに蕩けていく。
(穢れが…!!)
息も出来ないような激しい口付けの最中、生理的な涙の滲む瞳で梦月が何とか主上の方を見ると、「男」に成り果てた主上は何かを我慢しているかのような苦しそうな切なそうな表情で、頬を紅く染め、息を乱して梦月を見つめていた。
「待っ…」
「…朕はこんなにもそなたが好きなのに、そなたは平然としているのだな。」
主上はこう言うと、今度は梦月の白い首筋に這うようにして唇を宛てがう。そしてそのまま、舌先でねっとりと甘く愛撫し始めた。
最初のコメントを投稿しよう!