事の始まり

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内大臣(ないだいじん)の姫…」 小さな声で復唱しながら、もう一度鏡を見た。 その姫は、(やつ)れてはいるものの非常に美しい女人であった。十代の彼女の肌は、玉のような張りがあり、雪のように白く、きめ細かい。濡羽(ぬれば)色の黒髪はまるで絹糸の様であり、身の丈を遥かに超える長さであった。そしてその顔は愛らしく、利発さが垣間見える。 男の目には、至高の上玉として映ることだろう。 (…しかし、) この姫は、()の鬼の言う通り寿命が(いく)ばくも残っていなかった。鬼達には、それが分かるのだ。この病は呪いの(たぐい)ではなく、本人の天命によるものである。 「さて、梦月(むげつ)よ。」 戯の鬼が骨を軋ませながら立ち上がった。そして、梦月を見下ろして一笑。 「梦月、お前はこの死にゆく姫の魂を喰らって、体を奪ってしまえばいい。そしてこの姫に成り代わり入内(じゅだい)すれば、内裏(だいり)に入れるぞ。」
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