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~序章~
小島彰人ことアキヒトは片手にスマホを握り締め、
グーグルマップを横目に
就職先である梅田の美容院へと向かっていた。
地下鉄の駅からは近いのだが、出口が分からず彼は迷っている。
しばらく格闘した後で
ようやくそれらしきビルが見つかりホッとしていた。
【DELIGHIT】と看板が出ているその美容室は、
関東の有名店で修行したカリスマ美容師の
亀井蓮先生が梅田で独立したお店で、
去年開店5周年を迎えていた。
この激戦区で、凄い事である。
また評判のいい店で、トップスタイリストだと
なかなか予約が取れないことでも有名である。
そのため新しく支店を出す話があり、
今回アキヒトの通っていた専門学校に
就職の斡旋依頼があったらしい。
店を出すといってもすぐには無理なので、
新卒を多めに採用して育てるのだそうだ。
場所は梅田の一等地にあるし
店構えは都会的でおしゃれだ。
何というか、高級感溢れていて
自分みたいな田舎モノは追い出されそうな雰囲気がある。
(いや、きっとそんなことは無いはずだが)
彼は深呼吸して、店の勝手口を開ける。
“せっかく都会に来たんだ。
偉くなって稼いで、可愛い女の子にモテてやる!“
動機は何であれ
意気込みだけは、立派なものだった。
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