第九章 仲良くなりたい

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第九章 仲良くなりたい

ハルカさんと、帰る方向が一緒だと知ったとき アキヒトは『ラッキー!』と思っていた。 少しでも長く一緒にいたい。 そんなことを考えながら歩いて行く。 背の高さも、アキヒトとハルカさんはそんなに変わらない。 二人とも170センチ弱位だろうか。 背の高さを気にしてるのか、してないのか分からないが、 ハルカさんがヒールを履いたところを アキヒトはまだ見たことはない。 だがきっと、似合うだろうなとは思っていた。 「ねえ、ハルカさん。」 「なに?」 「ハルカさんはスカートとかヒールの靴とか履かないですよね?」 今日もミドルタイプのエンジニアブーツに スリムタイプのデニムをインしている。 それに合わせたロックTシャツがよく似合っていた。 「自分かて履かへんやん。」 「そりゃ俺は男ですから。」 そうアキヒトが言うと、ハルカさんは少し意地悪な表情になった。 「男かて履いてもええやんか。そこは差別するんか?」 「いや、その。すみません。」 謝ると彼女はクスリと笑った。 「アッキーは素直やな。若いわ。」 「はあ。」 アキヒトが相づちを打ったとたん 急にハルカさんが正面に廻ってくる。 少し釣り上がり、やや三白眼ぎみのつぶらな瞳が 濃い睫毛に縁取られている。 小さいけれどふっくらとした唇。 すべすべとした肌に見とれていると、ぎゅっと抱き締められた。 息が止まりそうになる。 「ハルカさん、酔ってます?」 目元がうっすらと赤らんで色っぽかった。 目眩がしそうだ。 「ん。酔っちゃったみたいー。」 楽しそうに笑う。 顔が近い、近すぎる! 息もできず、アキヒトは固まっていた。 “キスしたい!!” ふっくらとした唇が、あと数センチのところまできている。 向こうから抱きついてきたんだし、 頭の中では大チャンスと思ってはいるのだが 体がついて行かず固まっていると ハルカさんの顔が近づいてきて、 唇の端に触れるか触れないか?位のキスをされた。 「ハルカさん!!」 音をたてて血が昇り、真っ赤な顔になるのが自分でも分かる。 鼻血が出そうになったが、かろうじて出さずに済んだ。 「これ以上はお預けや。」 ニヤリと笑われて、からかわれたと知る。 「・・・・・・ハルカさん!」 またしてもしてやられてしまった。 だがアキヒトは 全く悔しいとは思っていない自分に驚いていた。
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