第十六章 見えない感情

1/1
前へ
/24ページ
次へ

第十六章 見えない感情

桜井遥はきっと几帳面なんだろう。 仕事ぶりも挨拶も丁寧だった。 さらさらストレートのロングボブは 色合いがかなり明るめだったが 本人を真面目に見せている。 「小島君のお友達やってね。わざわざ大阪まで来てくれておおきに。」 にこやかに言われる。 悔しいけど美人だ。 だが、望は彼女の目が笑っていないことに気付いた。 「たいした距離じゃないですから。 こうして彼がお世話になってる皆さんにもお会いできましたし。」 と、まるで奥さんみたいな言い方をしてみた。 どうだろう?と望はハルカの顔を見る。 その表情にはまったく感情が見えなかった。 “可愛くない女!” 望は内心ムッとしながらさらに言いつのった。 「アキ君九州ではめちゃモテてたけど、大阪ではどうです? やっぱり面白い人がモテるんですかね?」 少し、彼女の顔色が変わった。 こうでなくちゃ面白くない。 「私も彼女の一人でしたけど、きっと大阪でも人気ありそうですよね。」 一瞬だけハルカの顔色が白くなったが 「人気あると思いますよ。彼、気さくだし。」 と返す頃には平常に戻っている。 望みはスカした顔で言うハルカにムカついていた。
/24ページ

最初のコメントを投稿しよう!

13人が本棚に入れています
本棚に追加