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第十六章 見えない感情
桜井遥はきっと几帳面なんだろう。
仕事ぶりも挨拶も丁寧だった。
さらさらストレートのロングボブは
色合いがかなり明るめだったが
本人を真面目に見せている。
「小島君のお友達やってね。わざわざ大阪まで来てくれておおきに。」
にこやかに言われる。
悔しいけど美人だ。
だが、望は彼女の目が笑っていないことに気付いた。
「たいした距離じゃないですから。
こうして彼がお世話になってる皆さんにもお会いできましたし。」
と、まるで奥さんみたいな言い方をしてみた。
どうだろう?と望はハルカの顔を見る。
その表情にはまったく感情が見えなかった。
“可愛くない女!”
望は内心ムッとしながらさらに言いつのった。
「アキ君九州ではめちゃモテてたけど、大阪ではどうです?
やっぱり面白い人がモテるんですかね?」
少し、彼女の顔色が変わった。
こうでなくちゃ面白くない。
「私も彼女の一人でしたけど、きっと大阪でも人気ありそうですよね。」
一瞬だけハルカの顔色が白くなったが
「人気あると思いますよ。彼、気さくだし。」
と返す頃には平常に戻っている。
望みはスカした顔で言うハルカにムカついていた。
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