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第十七章 見えない感情 その2
しかしさすが有名店の副店長だけある。
仕上がりは素晴らしく、文句のつけようが無かった。
お金と時間をかけて大阪まで来た甲斐がある。
「いかがですか?」
と微笑むハルカが自信満々に見えて、望はまたイラつく。
「まあまあね。」
彼女は言いながら、椅子から立ち上がった。
と、床で滑りそうになる。
危険を察知したアキヒトが駆け寄ろうとするが、
その前にハルカが望にすっと近づいて支えた。
スマートな動きだった。
「大丈夫?気をつけなあかんよ。
怪我したらベッピンさんが台無しやで。」
ふっと笑う顔が凛々しくてアキヒトは驚いた。
こんな顔もできるんだ。
「あ、ありがとう。」
望が赤くなりながら礼を言う。
あの彼女がすっかりおとなしくなってしまった。
宝塚のスターみたいだと、
アキヒトは感心しながらハルカを見ているが
目が合った瞬間、ぷいっとソッポを向かれてしまう。
「!?」
何でだろう?
心当たりなどまったく思いつかない彼は
その日一日をブルーな気持ちで過ごしていた。
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