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第十八章 望の策略
店を閉める頃、また望がやってきて
九州の土産をアキヒトに渡した。
「さっき持って行こうと思ったんだけど、預けてる荷物に入れてたんよ。」
「わざわざありがとう。」
土産を受け取る。好物の博多通りもんだった。
「あのさ、本当は私アキ君とよりを戻そうと思って来たの。」
「マジかよ!」
誰にも聞かれていませんように・・・・・・とアキヒトは思いながら
彼女の話を聞いていた。
「マジよ。でもアキ君、桜井さんのことが好きなんでしょ?」
「好きって言うか・・・・・・その。」
「好きなんでしょ?ごまかすな!」
バサッと言われ、彼は姿勢を正した。
「ごめん、好きだ。」
「だよね。顔に書いてるもん。
昔からアキ君、素直やったからね。
他に付き合ってる子の前に出たときも顔に出るから
あと彼女が何人いるかとか、だいたい分かってたもん。」
「うげ。」
変な声が出る。
そうか、お見通しだったのか。
アキヒトの背中を冷や汗が流れ落ちた。
“女は怖いぜ。”
「桜井さんモテそうだし、せいぜい頑張りよ。
大阪は都会だし、アキ君レベルならゴロゴロいるだろうからね。」
「うるさいわ。」
ムッとしながら言うと、望が近づいてきた。
そして有無を言わさず彼にキスをする。
「!?」
結構長い時間だった。
「・・・・・・おまえ!」
望が離れた瞬間にアキヒトが慌ててそう言うと、
彼女はニヤリと笑った。
「あ、あれ桜井さんじゃない?見られたかな?じゃあね!」
「おいコラ!」
慌てて言うが、望はさっさと行ってしまう。
不穏な気配を感じたアキヒトは
恐る恐る後ろを振り返る。
そこには能面のように無表情の
ハルカさんが立っていた。
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