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日曜日の幸せ.2
『何で私の言う事を聞かないの!?』
ごめんなさい。
『もうこれ以上かばう事はできません。もう耐えられません。』
ごめんなさい。
『何も反応しないんだね~さやかさん気持ち悪いよ?』
ごめんなさい。
ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。
ずっとごめんなさいって言ってた。友達にも、先生にも、お母さんにも。そうするしか無かった。みんな、わたしが大嫌いだったから。
公園のベンチに座り、駄菓子屋さんで買ったキャラメルの箱を開け、一つ食べる。甘い。香りも何も無くただただ甘い。でも寂しさが紛れた事は自分でも分かった。
すると、テッテッテッと小さな三毛猫が近付いてきた。
にゃーと間抜けな声が膝くらいの位置から聞こえる。いつも公園に来ると、このねこちゃんはわたしの近くに来る。キャットフードも魚も無いのに。
「また怒られちゃった。もう先生も味方してくれないって。」
言葉を返すわけ無いのに、二つ目のキャラメルを口に放り込みながらつい言ってしまう。
「上手く喋れるようになりたいな。あなたの前だとこんなに喋れるのにね。」
また、にゃーんと声が聞こえる。そしてベンチにねこちゃんが飛び乗り、そのまま私の近くに来た。野良のはずのにそこまで汚れてない毛、小さいのに人間よりも強く感じる温かみ。思わず頭を撫でてしまった。柔らかい。何だか、心がぽかぽかする。
「これがしあわせなのかな・・・そうなのかな、ねこちゃん。」
今度は鳴かない。その代わりに、ねこちゃんの頭に置いたままのわたしの手をぺろぺろと舐めた。くすぐったい。そしてざらざらしている。不快なはずなのに、もっと心がぽかぽかした。
「ねえ、しあわせって何なのかな。わたしのしあわせって、どこにあるのかな。」
にゃーんとねこちゃんは鳴いた。この子はもうしあわせなのかな。そうでもなかったらこんなにのん気じゃないだろう。
・・・そういえば、この子の名前ずっと決めてなかったなぁ。ねこちゃん、だとこの子も不満かもしれないし。
ちょっとストレートかもしれないけど、こんな名前を付けてあげよう。
「ねえ、ねこちゃん。あなたの名前を決めたよ。」
ねこちゃんを膝の上で抱えながら、新しく決めた名前をこの子に告げる。
「今日からねこちゃんの名前はーー」
「お目覚めですか、日乃さん。」
「・・・あっ、おはようミケさん。」
懐かしい夢を見た。よくあの子に会うために公園に遊びに行ってたなぁ。
・・・思い出したくない事も少し思い出したけど。
「ココア、淹れて来ましたよ。うなされていましたからね。」
「ありがとうね。」
ミケさんからココアを受け取り、一口飲む。温かい。心にじんわりと、優しさのこもった温かみが染み込む。
「もう暗くなりましたし、帰られますか?」
「そうね、ありがとうミケさん、ハンモック貸してくれた上にココアまで。」
「いえいえ大丈夫ですよ。ココアの分のお代は結構ですからね。」
そう言われたので、お言葉に甘えてホットケーキ分のお代を払った。
「ミケさんごちそうさま!また来週!」
お礼を言った後、お店の扉を開ける。
「こちらこそ今週も来てくださってありがとうございました。また来週もお越しください。」
ふにゃあっとしただらしない顔をミケさんに見られないように、すぐに店の外に出る。
帰路に猫の集団を見かけたのでペコリとお辞儀をしておいた。それに気付いたのか、先頭の大きなキジ色の猫がじーっとこちらを見つめた後、にゃーおと鳴いて去って行った。ミケさんの言ってた集会の帰りだろうか。ぼんやりとそう思いながら自宅であるマンションに戻った。年甲斐もなくスキップしながら。
「よーし、明日からも頑張るぞー!めげるな私ー!」
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