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第一章
掌いっぱいのこの幸せが大事で、一滴でも零してしまいたくなくて、慎重に慎重に守ろうとしていた。
ぷかぷかとしたこの時間が大切だから。
新鮮な新しい季節をひとつ一緒に見送ったあと、みんなが感じたこと。
おんなじ空気を吸って、吐き出した息はみんな違ったけれど、確かに一緒に息をして一緒に笑っていた。
一緒に笑っていくのだ、きっとこれからも。
変わらず同じ空気を吸って、自分だけの吐息を吐き出して、一緒に大人になっていく。
今しか感じられないこのぷかぷかした心地とお日様のように笑う時間が過ぎて、いつか同じ空気に触れて咲いたそれぞれの想いがカラフェからグラスへと注がれる。
新しい馨りが鼻を掠めたら、あの時を懐かしみ語らい、これからも共に過ごしていくのだろう。
だから掌に注がれていく一滴一滴の幸せを大切に大切に守っていた。
これからもずっと変わらず守っていきたくて、感じたままを信じ続けたいから。
*
カラフェ:
栓を抜いたばかりのワインを注ぐガラスの瓶
空気に触れせて香りをひらく際に使用される
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