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俺と絵里香が二人きりになるのなんて、兄ちゃん絡みでしかない。
絵里香と兄ちゃんが喧嘩しないと、二人きりになることもまずないのだ。
俺の気持ちを知ってるからか、兄ちゃんと付き合ってからの絵里香は極力俺と二人きりになることを避けた。
でも、喧嘩した時だけは別だった。
俺にだけ、愚痴をたくさん言ってくれる。
いつしか、俺は兄ちゃんと絵里香が喧嘩してくれることを祈ってた。
そんなんじゃダメなのに。
「なぁ、絵里香」
「ん?」
「もう、喧嘩しても俺の事呼ぶなよ」
俺は気がついたら、そう口にしていた。
自分から、唯一の二人きりになるきっかけを排除していた。
「え?どうしたの、急に」
「好きな子が、できたんだ」
俺は、絵里香のことを楽にさせたくて嘘をつく。
こうすれば、もう俺と二人きりになってはいけないとか、いらない気を遣わせなくで済むから。
「え!?好きな子!?どんな子!?」
絵里香が目を輝かせて驚いている。
「どんなだっていいだろ」
絵里香の反応に、俺は簡単に傷つく。
自分から言ってし、こんな反応をされることもわかっていたのに。
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