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──パンッ
弾けるようなその音と高いジャンプの少年。
「やしな?ねー、聞いてる?」
「あ.......うん」
友達の言葉も聞こえなくなるくらいに、あたしの思考は停止していた。
「ねぇ、あのすごい高く飛んでる人誰.......?」
彼に視線か釘付けになって、目線を離さず、横にいる友達の袖を引っ張る。
「え?杉森(すぎもり)のこと?」
「すぎ、もりくん.......」
「そう、杉森丈(じょう)小学校の時のクラスメイトだけど、あいつがどうかした?」
「ううん、どうもしない!」
──どうかした?
そう聞かれて、我に返った。
だって、自分でも自分に「どうかした?」って聞きたいくらいだったから。
そんな顔もよく見えない、分かっているのは高い彼が高い身長だということくらい。
すごいジャンプ力を持っていて、そして、彼が返すボールはとても力強いということ。
それだけしか知らないのに、もう目が離せなくて、一瞬にして、あたしの世界は彼一色になった。
──杉森丈。
名前しか知らない、その男の子にあたしの胸は高鳴る一方だった。
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