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「.......いた」
少しだけ、走りながら追いかけるとすぐに背中をみつけた。
「.......待って」
グイッと彼女の腕を後ろから引っ張ると振り向いて目を丸くしている顔。
「え.......?杉森くん?」
俺が追いかけて来るとは思わなかったのだろう、かなりビックリしている。
「俺のことも名前で呼んで」
なんて声をかけたらいいかなんてわからなくて、俺から出た言葉はこれだった。
「.......え?」
「なんで、俺だけ苗字なの」
俺のこと、好きだって言ったくせに。
俺だけが遠い存在のように感じてすごく嫌だった。
想いの違いがあるとか言いながら、しっかりと独占欲だけは出てきてしまう自分に少し苦笑い。
「呼んでもいいって言われてないから?」
「しょったとかトラは呼んでいいって言われたの?」
「いや、それは仲良くなっていつの間にか呼んでたけど.......」
俺の言いたいことがわからないんだろう。
怪訝な顔をしている。
そんなの、自分でもよくわからねーよ。
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