好きなわけはない=YASHINA=

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「なに、いいものって.......」 なんだか楽しそうな光に仕方なく、暗い道を歩く。 「.......あ」 ひとつの家の前を通りかかった瞬間に「杉森」と書かれた表札が見えて、足が止まってしまう。 「ほら、いいものあったでしょ?」 「ここなんだ.......」 「あたしの家からなかなか近いんだよね」 ここが杉森くんが毎日帰ってる家。 それを知れただけで、心が暖かくなる。 「あれ?光?」 後ろから、タッタッタッという足音と一緒に光に気がついた声が聞こえる。 「蒼ちゃん!」 光の顔がぱぁぁぁっと輝く。 「あ.......」 この前の昼休みに一緒にいた、杉森くんのお兄さんだということはすぐにわかった。 「あれ、やしなちゃんだっけ?」 光の隣にいるあたしに気がついて、ニコッと微笑む。 「こ、こんばんは.......」 たいして言いたい言葉も見つからず、何を言ったらいいかもわからなくて、ただ挨拶をするだけに留まってしまう。
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