159人が本棚に入れています
本棚に追加
「.......やしなちゃん」
そう口にしただけで顔が綻ぶのが自分でもわかる。
「わー、重症」
「は?」
「名前呼ぶだけでにやけちゃうなんて、よっぽどだね」
「うるせーよ」
ずっと呼びたいって思ってた。
俺が呼んで振り向く姿を何度も想像した。
目の前にいるわけじゃないのに、実際に呼ぶだけでドキドキするんだ。
「.......俺の事もう好きじゃねーと思うんだよね」
「まって、てことは、やしなちゃんは丈のことが好きだったわけ!?」
「.......あぁ。俺が好きになんのが遅すぎたのかもな」
はぁっと息を吐いて、天井を見つめる。
「なんで、そう思ったの?」
「.......噂があんだよ」
いつの間に広がったのか分からない、あの噂。
「噂って?」
「モリーと付き合ってるって噂」
最近、学校中の噂になってる。
たしかにモリーとやしなは、今となりの席ですげぇ仲がいい。
授業中も間の時間も、いっつも仲良く話してて、俺から見たら羨ましくて仕方ないんだ。
最初のコメントを投稿しよう!