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「丈、距離縮めてこいよ」
宿泊の荷物をもって、玄関で靴を履いていると兄ちゃんに声をかけられる。
「うるせー」
ニヤッと笑う兄ちゃんが鬱陶しくて、軽くあしらって家を出る。
「言われなくても、わかってるんだよ」
俺だって、距離縮めたいと常々思ってる。
リーダー会議のときは、なんとなく距離を縮めれた気がするけど、みんなで居る時なんかは、俺から話しかけることすらできない。
「なに、やってんだろ」
せっかく聞いた連絡先も1度もメッセージを送れていない。
でも、今回は同じ班でリーダー同士。
せっかくの機会だから、距離を縮めたいって本当に思ってる。
俺の事を好きだと言ってくれたときに、すぐ俺も好きになれていたらよかったのに。
モリーとも付き合ってないみたいだし、心変わりはしていないと信じたい。
でも、人の心なんでいつ変わるかわからないから。
好きな芸能人だってどんどん変わってくもんだ。
好きな人だって、例外じゃない。
そしてみんなと同じように「やしな」って呼ばせてもらって、俺のことも「丈」って呼んでもらう。
とりあえずの目標はそこだ。
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