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「じゃあ、杉森にする?」
「や、そこは名前にしよーぜ。そんなに苗字で呼びたいんだったら話は別だけどさ」
小学生のときに光はなぜかずっと俺の事を苗字で呼んでたけど、他の女子は名前だった。
光が苗字で呼ぶのは、きっと兄ちゃんのせいだけど。
「.......じゃあ、丈くんで」
なぜか渋々という感じで、呼び方を改める。
「オッケー.......てかなんでそんなに渋々なんだよ」
「.......恥ずかしいから」
「.......っ」
そんなふうに急に顔を赤くされると、こっちまでうつってしまいそうになる。
「でも、呼ぶね。丈くん」
──トクンっ
改めて呼ばれた名前に心臓がひとつ跳ねた。
「お、おう」
好きな子に自分の名前を呼ばれることがこんなに嬉しいとは思っていなかった。
「あの、さ」
あともう一歩。ここまで来たら勇気は出せる。
「ん?」
「俺もみんなと同じように呼んでもいいかな?」
「.......うん」
「やしな、ね」
その名前を口にして、頬が緩んでいくのがわかる。
「うん」
「ずっと呼びたかったんだ。やしなって」
「え?」
「なかなか勇気出なかったけどな」
やしなの顔がどんどん赤くなっていくのがわかる。
きっと、俺の顔も赤いと思う。
こんなの、もう告白してるみてーだけど、ちゃんとその時が来たら言わせてほしい。
「好きだ」って伝えたら、どんな顔をしてくれるのだろうか。
想像しただけで、ドキドキしてしまう。
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