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「それにしても、なんなんだその曇り傘ってのは?」
歩道橋を渡る間、俺はずっと疑問に感じていたことを聞くことにした。友達は少し申し訳なさそうな顔でこう言った。
「あくまで噂だぜ。噂。その曇り傘が何やら幸運をもたらすんだと。見かけた奴がその日大事な試合に勝っただとか、第一志望に受かっただとか、彼女が出来たなんてのもあるらしいぜ。」
「なんだそれ。四つ葉のクローバーかよ。だいたいそういうのは努力してた奴がたまたまそのタイミングで報われたってだけの話だろ。そして、曇り傘を見つけたところで、お前に彼女が出来るなんてことは絶対にない。自分の顔を鏡で見て考え直すんだな。」
「わっかんねーだろーが。明日、いや今日の帰り道にでも運命の出会いが待ってるかもしんねーだろうが。俺を好きになってくれるひとがいるかも知れねーだろうが。」
「ない、ないねー。そんな都合よくいくかよ。いいことがあったとしてもせいぜい明日の小テストの山があたるくらいだろ。」
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