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「あ、ほんとだ。」
「だろ?よっしゃ!これで明日には彼女が」
「いや、だから絶対ねーって。」
「ひでー。」
わざと派手に落ち込む友達をおいて、俺はその白い傘を眺めていた。明らかにファンタジーの類いではなく、現存する人物のようだった。ちょうどこちらに背を向けていて姿は傘に隠れて見えない。なんで傘さしてんだ?気になってまじまじと見つめ続けてしまう。それに気づいた友達がこちらによってきて、俺と同じように見つめ始める。
「どうして曇り空に傘なんてさしてんだろうな?明らかに普通の人だろ。」
「結局は美容なんじゃん?ほら、言ってたみたいに紫外線とか、気にしてんじゃねーの?」
曇り傘が幸せを運ぶ青い鳥ではなく、噂がただの噂だと思えてきて友達は少し冷めたように答えた。そんなもんか。俺もそれにつられて高揚していた気持ちがうなだれるのが分かった。
「あ。」
もう一度、よくその白い傘を見ると俺はその人が傘をさす理由が分かった。
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