曇り傘

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 「よく見てみろよ。あの傘、だいぶ乾いたみたいだけど、ちょっと雨に濡れてる。雨に降られた後、止んだのに気づかずにさしたままなんだ。」  「あー、なんだ。その程度のことか。曇り傘見つけたと思ったのによ~。」  完全に冷めきってしまった俺と友達はため息をつくと、歩道橋を向こうの端まで歩き始めた。結局、噂は噂だ。曇り傘も四つ葉のクローバーも幸運を運んでくれるわけなんてない。いつもと同じ日だ。  歩道橋の端までつくと、友達が「おいっ」と変に高鳴った声で俺に呼びかけた。  「あれ見ろよ。日差しが照ってきてるぜ。これもひとつの幸運なんじゃね?」  「そんなわけあるかよ。空が晴れるだけで幸運なら、ほぼ毎日幸運だよ。」  「違うって。あれだよ、あれ。ほら、そこ!」  友達が指差す方に顔を向ける。俺の目が光に照らされる。  「虹だよ、虹!それもこんな近くに!初めてだよ、こんなはっきりとした虹!」  そこには大きな虹が光輝いていた。夕焼けをバックに異なった色の橋がかかる。上の方にかかる赤が外ににじみ出て空全体が綺麗な色を放っているように見えた。
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