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シンデレラは夢のような時間を過ごした。
突然、魔法使いの妖精が現れて、わたしは素敵なドレスに変身して、ガラスの靴を履いて、かぼちゃの馬車に乗って舞踏会へ行けることになったのだ。
そこでわたしはお城の王子様と踊った。
まさに、夢としか言い様のない時間だった。
世界がこんなにも輝いて見えたのはいつぶりだろう?
しかし、12時の鐘が鳴る。
魔法使いの妖精に、12時に魔法が解けてしまうと言われていたのだ。
わたしは階段をかけ降りてお城を出ていく。
途中、ガラスの靴が脱げてしまったが、もたもたすることはできない。
王子様に、こんな姿は見られたくない。
お城の外へ出た時、ちょうど魔法が解けた。
シンデレラはお城を振り返りながら思う。
本当に夢のようにあっという間に終わってしまった。
でも、気持ちは明るかった。
明日からも、頑張ろう。
シンデレラは今は心からそう思うことができた。
わたし、作倉真衣はシンデレラが幸せそうな天使の寝顔で寝たのを見ながらほくそ笑んだ。
上手くいったようだ。
わたしが妖精にお願いしたのは、
「わたしをシンデレラの姿にして、わたしが魔法使いの妖精にドレスとかぼちゃの馬車とガラスの靴を贈られて、舞踏会へ行き、王子様と踊って12時の鐘で帰ることをシンデレラにも現実に感じさせて」
「シンデレラに魔法は…」
「これくらいなら許さない?」
「……」
そうしてシンデレラになったわたしはシンデレラのストーリーと全く同じことを経験して、つまりはシンデレラもシンデレラのストーリーに沿ったことを経験したと感じてシンデレラの館に帰ってきた。
なぜ12時にしたかといえば、お城から家まで帰るときは徒歩だからだ。
そして、ワープするときはもとの場所に戻らないと現実の世界に戻ってこられないというのだ。
だから、シンデレラには申し訳ないけど12時で帰ることにする。
そして。
1、2、3。
午前3時、シンデレラになったわたしは少しシンデレラと境遇が似ているだけの普通の女の子に戻った。
たぶん、シンデレラは午前3時、あの世界でたったひとりのシンデレラになったのだろう。
わたしも、シンデレラのようにはいかないかもしれない。
でも明日からはお義母さんに声をかけてみようかな。
今は、今だけだとしてもそう思うことができた。
シンデレラストーリーではないけれど、何だかそれで
充分な気がした。
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