Rain

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 教壇に上がった私は、白いチョークを握りしめて、さっそく解答を書き始める。 『f(x)=x³-2x²+3x-4  f(1)=1³-2⋅1²+3⋅1-4=-2  f'(x)=3x²-4x+3  f'(1)=3⋅1²-4⋅1+3=-4  よって、点(1,-2)におけるf(x)の接線の方程式は  y=-4(x-1)-2  ∴y=-4x+2』  私が書き上げた解答を見た先生は、苦虫を噛み潰したような顔をして、 「正解だ。席に戻ってよろしい」  と、午前中と同じセリフを口にする。  私が席に戻ると、和人が、 「やるじゃん」  と小声で囁く。 「まあね。今回は授業聞いてたし」 「一応、解答を書いたメモを用意してたんだけどな」  和人はそう言うと、紙切れをチラリと私に見せてくれる。そこには午前中と同じように、黒板に書かれた問題の答えが記されていた。  こういう和人の優しさが私は大好きだ。そんな優しさに触れるたび、私の中で和人の特別度合いがどんどん大きくなってゆく。  だけど、和人はそんな私の気持ちにきっと気づいていない。私も和人との関係が壊れるのが怖くて、想いを伝えることができない。それでも和人との距離をもっと縮めたいと思うのは私のワガママなのかもしれない。
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