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和人は廊下を歩き、人気のない理科室の方に向かってゆく。いったい何をするつもりなのだろうと思いながら、私は後をついて行く。何度か和人に何をするのか尋ねてみたけれど、答えは返ってこなかった。
理科室の中には誰もいない。和人は理科室の扉を開けると、ずかずかと中に入ってゆく。
「勝手に入ると怒られるよ!?」
私は慌てて止めようとしたけれど、
「大丈夫だよ」
と、和人は教室の奥の方へと進んでいく。仕方なく私もその後を追った。
和人は一番奥の実験台の所まで行くと、身を屈めて何かを取り出した。そして、それを私の方に差し出す。
和人が差し出したのは、真新しい傘だった。
「これ、どうしたの?」
私は尋ねた。
「お前が傘忘れたって言ってたから、昼休みにコンビニまで買いに行ったんだよ。感謝しろよ」
「えっ、本当に? わざわざ私のために?」
「そうだけど? 迷惑だったか?」
和人の問いに、私は首を強く横に振る。
「ううん、迷惑なんかじゃないよ。嬉しいよ。本当にありがとう。でも、何で理科室なの?」
「ここだったら滅多に人が来ないだろう? 教室なんかで堂々と渡したりしたら、お前が傘忘れてきたのがみんなにバレるし」
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