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和人は単に私の傘を買ってきてくれただけじゃなく、渡し方まで気を使ってくれていたらしい。そんな和人の優しさと気遣いに、私の心は更に惹かれていく。いっそこのまま告白してしまおうかとも思ったけれど、私が傘を受け取ると、和人はさっさと理科室を出ていく。私は慌ててその後を追った。
教室に戻ると、まだ何人かのクラスメイトが残って談笑していた。私と和人は、自分の席に戻って鞄をとってから教室を出る。そして、下駄箱から靴を出し、傘をさして歩き始める。
「ねえ、そういえばすっかり忘れてたけど、傘のお金払わなきゃ」
ちょうど校門を出た辺りで私は言った。すると和人は、ゆっくり首を横に振る。
「いらないよ。たいして高いもんじゃないし、そんなに金に困ってるわけでもないから」
「だけど、それじゃ申し訳ないよ」
「気にするなって。俺が勝手に買ってきたんだから」
そこまで言われると、無理にお金を払うのも悪い気がする。私は和人の好意を素直に受け入れることにして、
「ありがとう。本当に助かったよ」
ともう一度お礼を言った。
和人と一緒にいると、私はお礼を言うことばかりだ。それだけ、私は和人に助けられている。だけど、和人が私以外の誰かを助けるところはそんなに見たことがない。私はそれが気になっていた。
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