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私はただただ憂鬱な気分になった。いつも細心の用心を払っているのに、肝心なときにこれじゃ全く意味がない。私が傘を忘れてきたなんて知られたら、きっと揶揄ってくるのは和人だけじゃないはずだ。
「私が傘を忘れてきたなんて、誰にも言わないでよ」
私は和人に念を押す。
「わかってるよ。そんなこと言いふらしたら、お前がみんなに揶揄われるだけだろう?」
「わかってくれてるんならいいんだけど」
「それよりお前、帰るときどうすんの?」
「問題はそこなんだよね……。いつもならお母さんに持ってきてもらうこともできるけど、今日は出かけてていないし。まあ、誰かの傘に入れてもらってコンビニまで行って、ビニール傘でも買うしかないかな……」
私はため息を吐いた。そんな私を見ながら、和人は心配そうな表情を浮かべて、
「そんなことしたら、傘忘れてきたのバレバレじゃん」
と言う。
「でも、仕方ないよ。びしょ濡れで帰るわけにもいかないし」
「まあ、そうかもしれないけど……」
和人はそう言い残すと、私の傍から去っていった。
結局のところ、和人が何を言いたかったのかはわからない。ただ、いくつかわかったのは、今日の降水確率が70%で、午後も雨が降り続くということくらいだ。私を更に憂鬱にさせる事実でしかない。
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