Rain

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 苦手な数学で思いもよらない幸運を得た私は、気分がずいぶん楽になった。ニ教科目は英語。もともと英語はそれほど苦手ではないし、和人と比べても唯一引けを取らない教科だ。  私は調子よく解答欄を埋め、時間をかけて見直しまでする。英語の試験終了まであと五分となったとき、ふと窓の外を見ると、雲行きが怪しくなっていた。晴れ渡っていた空が、いつの間にか灰色の雲に覆われている。雨こそ降っていないが、太陽はすっかり隠れて薄暗い。  降水確率10%なのに雨が降るんだろうか。もし降ったとしても、すぐにやむに違いない。だって、降水確率は10%なのだから。私は自分にそう言い聞かせた。  英語の試験が終わり、10分の休憩を挟んで、三教科目の国語の試験が始まった。そのとき、突然、ゴロゴロと雷の激しい音が聞こえてきた。そして、まるで、夏の夕立のように激しい雨が降り出す。  とはいえ、夕立のようなものなら、すぐにやむだろうし、試験が終わる頃には晴れているに違いない。それに、私は雨のことなど気にしている場合ではなかった。目の前には試験問題と解答用紙がある。私は時間内にこの解答用紙を埋めなければならないのだ。
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