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国語の試験が終わっても、雨はやむ気配を見せない。雨足は強くなったり弱くなったりしているが、決して晴れ間は見えない。
昼休憩が終わって、四教科目の社会の試験が始まっても、五教科目の理科の試験が終わっても、雨はやまなかった。多くの受験生は私と同じように傘を持ってきていないようだったけれど、休み時間に親に連絡したり、何らかの手を打っていた。だけど、私は何の手も打っていない。
高校から家までは歩いて15分。こんな雨の中を15分も歩いたら、びしょ濡れになるのは明白だ。
今からでも母に連絡して傘を持ってきてもらおうかと思ったその時、背後から誰かに肩を叩かれた。振り返ると、そこに和人が立っていた。
「お前、傘持ってきてないの?」
和人が言った。
「うん、持ってきてない。だって、天気予報じゃ降水確率10%だったし、雨が降るなんて思いもしなかったんだもん」
「それでも、一応折り畳み傘くらい持ってくればいいだろう?」
「私、折り畳み傘なんて持ってないもん」
「仕方ないな」
和人はそう言うと、鞄を開けて中を探り始めた。そして、折り畳み傘を取り出すと、私の方に差し出す。
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