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和人は昼休みが終わるギリギリまで席に戻ってこなかった。戻ってきたときには、ずいぶん息を切らしていた。一体どこで何をしていたのか知らないけれど、慌てて戻ってきたらしい。
窓の外を見ると、相変わらず雨が降り続いている。雨は弱まるどころか、どんどん激しさを増しているように感じられる。私の憂鬱さもどんどん増してゆく。
しかも五時間目の授業は本日二回目の数学。数学嫌いの私にとっては踏んだり蹴ったりだ。今度は当てられまいと、しっかり黒板の方を見るように気をつけるけれど、どうしても雨が気になって、ときどき視線が窓の外の方に向いてしまう。
午前のこともあり、先生はそんな私の視線の動きを決して見逃してくれなかった。
「野村、前に出てきてこの問題を解いてみろ」
本日二回目の指名。いやらしいにも程がある。だけど、指された以上、拒否することはできないし、無視することもできない。
それに、午前中とは違って、今回はきちんと授業を聞いていたので解けないこともない。今度の問題は三次関数の接線の方程式を求めるものだ。私は頭の中で解答を練りながら黒板へ向かう。
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