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冒頭
「あのなあ、草枕の冒頭ってどんなんやった?」
「草枕って夏目漱石の?」
「そう」
「なんか理屈を言ったらみなから煙たがられるし、情に流されたら損するばっかりやし、自分を押し通したらワガママ、自分勝手って言われるし、どないやねんって、そんな感じちゃう?」
俺はいつものカフェでブレンドコーヒーを飲んでいた。
「ほんで主人公は、この世は住みにくいっていうねんな」
「そや。それがどうしたん?」
彼女はほうじ茶ラテを飲んでいた。
「ほんで住みにくいから、どないすんの?」
「誰が?圭ちゃんが?」
「なんで俺やねん。主人公やんか?」
「よう知らんけど、絵を描くんちゃう?」
「なんで?」
「そこまで知らん。自分で読んだらええやんか。たぶん携帯でも読めるで」
そうなんか。携帯で夏目漱石の本が読めるんか。
「タダなん?」
「たぶん」
彼女はほうじ茶ラテを、ストローで半分飲んだ。セミロングの髪を少しかきあげた。
「亜美は住みにくい?」
「私?圭ちゃんがおったら、おもろいけど、おもんない奴もおるやん。なんかキャラ弁ばっかり食べてるような感じの子。私、そういう子とは合わへんねん」
キャラ弁ばっかり食べてる子って、そんな奴おるか?
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