第二の母

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第二の母

お母さんが検査室に入ってから、どれくらいの時間が流れただろうか? バタバタと看護師さんが出たり入ったりを繰り返している。 「ーーあの、すいません」 「はい。どうしました?」 一瞬にして足を止め、看護師は振り返った。 「ーー立花静香の娘ですが、母は?」 落ち着かない。 ちゃんと様態を聞かないと不安だった。 「今ちゃんと検査してますので、お待ちください。ーーきっと大丈夫ですよ」 看護師は笑って言う。 本当に大丈夫な気がしてくるから不思議だった。 何もしないで、ケータイも見る事のない時間が流れていく。 ただ待つだけの時間はとてつもなく長く、とてつもなく辛い時間だった。 医師が出てくる。 「ーーお父さんは?」 医師がそう私に聞いてくる。 「連絡がつかないの」 私は答える。 「他に大人の親戚の方はいないのかな?」 「おじいちゃんも、お婆ちゃんももう亡くなっちゃったって聞いてるし、、いないと思う。わからない」 精一杯、言葉を整理したつもりだった。 よくわからないけど、私だけじゃダメなんだろうか? そんなタイミングだった。 私は何かに守られているーーそう思った。 「夕夏、どう?お母さん、大丈夫?」 「ーーまだわからない。大人の人と話がしたいみたいなんだけど、お父さんに連絡がつかなくて、、」 「ーー私が聞くわ」 そう名乗りを上げてくれたのは、渡辺由美の母親で、渡辺香織だった。 私はほっと一安心した。 よくも悪くも、これで母の様態が分かる。 しばらくすると、カンファレンスルームから、渡辺香織が出てきた。 「ーーそれで?」 不安な思いで、私は聞いた。 「ーーいい?落ち着いて聞いて」 香織は言った。 「あなたのお母さんね、、体の中に胆石っていう石があるみたいなの。それを取るために手術をするようなのーー退院まで長引くと思うわ」 手術。聞き慣れない言葉が、不安を書き立てる。 「大丈夫。石を取るだけだから、すぐに終わるわよ」 「ーーほんと?」 「うん」 そして香織が言った。 「お母さんが退院するまで、私が面倒見るわ。 大変でしょうから、私の家に来なさい」 「ありがとうございます」 人の暖かさを身に染みて感じた。 人がいて、周りの人に支えられて私は生きてる。それを痛感する出来事となった。 「ーー困った時はお互い様だから」
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