紛れ込んだ犬

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紛れ込んだ犬

ーーワンッ。 市民プールに犬が紛れ込んできたようで、何度も吠えている。 ワンッ、ワンッ、ワンワン。 「どうしたんだろ?」 思わず、お互い目を見合わせて、犬の鳴き声のする方に歩いていく。 私は目を疑った。 母が倒れている。 倒れたお母さんの横で、警戒しているようにして犬が吠えている。 「ーーお母さん?」 「静香さん?大丈夫?」 お母さんの職場の人らしい人がお母さんに声をかけている。 誰が呼んでくれたんだろうか? 数分して救急車が到着した。 「ーー夕夏、あんたも行きな」 真剣な表情の由美が言った。 由美のお母さんも昔運ばれた事があるっていってた。 もしかしたら、当時の自分と重ねているのかもしれない。 「ーーうん。行ってくる」 「対した事ないといいね。後で連絡して」 由美が言った。 同じクラスでありながらも、それほど親しかった訳でもない。 でも、彼女の存在がとても暖かく感じられた。 「ありがとう。行ってくるね!」 私はそのまま救急車に乗り、病院に向かった。着替えや荷物だけを持ってーー。 ーーどうして、あのワンコはプールに入ってきたんだろう? ーーどーしてお母さんを助けてくれたんだろ? お母さんを乗せた救急車は、病院に到着する。 看護師さんに呼び掛けられながら、診断を確定するため、検査室に向かう。 ーーもう、戻ってこないかも知れない。 そんな事を思ってしまう私がいる。
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