初めての母との料理

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初めての母との料理

「ねぇ、お母さんーーハンバーグの作り方教えて」 「珍しいわね。普段そんな事言ったことないのにーー手を洗ってから一緒に作りましょう」 母が言う。 ーーこんな風に母と料理を作れる事の幸せを感じた。 一人で留守番をしている事の方が多かったし、その間寂しくて、心のどっかでいじけていた。 ーー私なんていなくても。 ーー消えてなくなっても誰も困らない。 そんな風にしか考えられなかったけど、本当はそうじゃなかった。 今は一緒に留守番をしてくれる柴ちゃんがいる事。元気になって帰ってきた母。 ムリはさせられない。 ご飯とか出来るところは、協力していかなければーー。 その日、人生で初めて母と料理をして、すごく楽しく感じられた。 母が倒れた時、私はすごく不安だった。 でも、私が困っているのを知って、助けてくれる暖かい顔ぶれがあった。 ーー「私はどんな時も、一人じゃない」 それを知る事が出来たのが救いだった。 救いもなく、誰かの差しのべる手を振り払って、消えていく命がある中で、私は大切な事に気づけた。 どんな状況に陥っても、私はけして一人ではない。 見てくれている人が、助けてくれる。 心優しい人がーー。 思いを巡らせていると、後ろから声が聞こえた。 ワンッ。 振り帰ると、柴ちゃんが尻尾をフリフリさせながら、後ろをクルクルと回っている。 アゴを撫で、そして頭を撫でる。 少しずつ、柴ちゃんの扱いにもぎこちなさがなくなってきたように思えた。
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