4人が本棚に入れています
本棚に追加
/8ページ
俺は見てしまった。夜中の3時。悪ふざけとして行った心霊スポットで、とても可愛い女の子を。
その日はいつもと変わらない日だった。仲間たちとコンビニの前で集まって。暑い中ろくに吸えもしないタバコをふかし、誰も来ない道路を眺め、バカ言い合っていた。
「暑っついな〜!」
「それな。あ、暑いならさ、涼みに行かね?」
「お前もしかしてそれって……」
「あぁ、あの山の廃墟のラブホ。」
確かに、あそこは山の上にあるから年中涼しい。しかしあのホテルには悪い噂が絶えない。
例えば、8月の上旬肝試しに中に入ると女の子の悲鳴と泣き声が聞こえてくるとか来ないとか。そんな曰く付きの所へなんて誰が行きたがる。
「今何時?」
「3時ちょい前ぐらい。もうすぐ朝じゃん。」
じゃあ行くか。と俺たちは乗り気でバイクを走らせた。左胸ポケットにはふかすだけのタバコ。ケツポケットにはスマートフォンと財布。
それだけを持ち俺たちは山道を上がった。山麓から見るラブホは焦げていて、少しだけ茶色い感じに見えているが、実際近くで見るラブホは窓ガラスが無く、コンクリートが焼けただれ、骨組みが顕になっている。
ラブホの周りも半径100メートル圏内には木々が生えていない。まるで生命を突き放しているようにも感じられた。
「よし、入るか。」
時刻は午前3時、俺たちは生まれて初めて、ラブホテルへ足を踏み入れた。中は異常に冷たい空気が流れている。気味が悪すぎる。
スマホのライトを頼りにロビーを通り抜ける。仲間たちはみな少しだけ震えていた。もちろん俺も例外では無い。冷静を装っているが心拍数は急激に上がっているのが分かる。
涼しいはずなのに額から汗が流れる。手のひらにも。汗の所為でスマホがズレ、ライトが揺れる。その度に照らしている物の影が変わり、俺たちに恐怖を与える。
最初のコメントを投稿しよう!