相合傘

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 おお?渡りに船とはこの事ではないか。 「マジ?」 「マジ。」  彼女は仕方ないなぁと言った笑みをこぼしながら小さく頷いた。 「サンキュー!助かる!」 「憧れの副委員長じゃなくて残念だったわね~。」  こいついつの間に!顔が火照るのがわかったが平静を装う。 「副委員長、優しいから頼めば相合傘してくれたかもね~。居なくて残念だったねぇ。」  ここで反応したら認めた事になる。あえて何の事かわからない顔を作っておく。耳まで暑いけど…。 「あたしん家近くまでだからね。お礼は~…」  顎の人差し指を当てて上を向く相手に俺は学食のナポリタンパンなと言いながらその隣に飛び込んだ。 「ええっ?も少しいいのにしてよ。謹製プリンとか!」 「あれは競争率高すぎ!」  女物の傘だから小さくはあるが、16本骨が幸いしてそれでもかなりしのげる。ありがたい! 「ま、いいけど。腐れ縁特典でまけといてやろう。ほれ、遠慮せずちゃんと入れ。どうせ他から見られたってカップルだって思う奴は居ないよ。」 「だな。」  少子化の影響で俺達の街じゃ小中高と知った顔が揃う事が多い。 場合によっちゃこいつみたいに幼稚園から続いている様な奴もいる。  こいつと俺の兄妹さ加減は周知だ。友達からもお前ら色気ねぇなと良く言われる位だ。  俺はセカンドバッグを抱え、肩がくっつく位に寄り添って身をかがめた。俺のほうが背が高いからこいつの持つ傘に入るには仕方がないのだ。  なんかちょっといい匂いするけど、こいつなのか?ちょっと戸惑う。 「あたしが居て良かったねぇ。」  彼女は身をかがめている俺を見てそう言った。 「感謝しなさいよ?って、フフフ!何か悪いことしたみたいになってる。」 「っせねぇな。お前がチビだからだろ。」 「言う程チビかぁ?一応背が高い方なんだけど。あんたが無駄にウドなのよ。てぇ、口を慎め店子よ。立場が分かっているのかねキミは。」 「う… スンマセン大家さん…。」  この雨の中放りだされてはかなわない。背の高さも歩幅もこいつに合わせて歩く。傘の中は宙空に張り付く桜の花びらで華やかだが、その範囲外は灰色と白い蜘蛛糸の世界。ずぶぬれまで3秒とかからないだろう。  小さな傘だが上半身だけでもほとんど濡れずにいられるのは実にありがたい…。  あ?  いくらなんでも普通二人で入ったら肩くらい濡れるだろう。 俺は隣の彼女の方に向いた。  向こうもなんだって顔で見返してくる。けど俺が見たのは相手の顔じゃない。 「お前、なんだってこっちに傘寄せてんだよ。」 「ん?あんたの方がでかいから。必然そうなんでしょ。」  俺は手を振った。
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