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階下で玄関を開ける音がする。
「おばさんこんにちは。」
入ってきた奴が誰だかすぐわかる。
けれど今日の俺はオペレーション5656の真っ最中なのだ。
関わってやる暇など俺にはない。
とんとんと階段上がって来る音が近付いてくる。
ん?なんかいつもとちがうな。
だが俺はオペレーション5656の真っ最中。ゴロゴロする事に全力を挙げているのだ!
関わっている暇などない!
すーっと引き戸が開く。
「いる?…」
居ようが居まいが俺はオペレーション5656の最中だ、お前などに関わっている暇はない!とは言えまた蹴り飛ばされてはたまらんので部屋の隅に転がって行こう… ゴロゴロゴロ…。
あいつはなんとも形容しがたい落ち着かない様子で俺を見た。
「またごろごろしてる!」
来る筈のそのセリフが来ない。なぜだ?
魂がぬけたようなそいつはそっと部屋に入り込んでくるとその場にぺしゃんと座った。
そしてそのまま黙りこくっていた。
なんだなんだ?こいつらしくもない、薄気味悪い…。
「どうしたんだよ。」
俺が寝転がったままそっちを向くと相手は小さくうんと言った。
「うんじゃないよ。」
「そ、そうね。その… ね?雨が降っていたの。」
なんだか悪い事をしたようにそう漏らした。
それはわかる。俺も突然降られて慌てて帰ってきたんだ。窓を叩く雨粒はここからでも見える。
「雨がどうしたって?」
「うん、その、私傘忘れちゃって、部活が終わったのね?だから困っちゃって。」
「おいおい。人に話をする時は順序立てて分かるように言えよな。」
俺はのっそりと身を起こした。あまりにいつもと様子が違う。
「だからその…。」
捕まった犯罪者の様に落ち着きの無い視線が辺りを泳ぎまくっている。
「だから何だよ。」
あーっ!いらいらするっ!
「こ…」
「こ?」
やっと絞り出されたその声を俺は復唱する。
次の瞬間相手は見た事も無い程顔を染めた。
「…告白 された。」
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