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昼前になると近所の高校生が増えた。
高校生は貸し出し目的が多い。
夏休みの宿題を片付ける為の参考になりそうな本を選びに来ている。
(ネットで検索したらいいんじゃない?)
と、心の中では思う。
何故なら、全部の内容を読むつもりはないのだ。
一部抜粋して書くつもりなのだ。
男子学生と思われる二人組に声を掛けられて、社会情勢の棚に案内する。
「こちらです。年代別に並んでおります。新聞が必要でしたら、カウンターでお伝え下さい。では、失礼します。」
(仕事内容は図書館だな…。)
と思いながら、向きを変えて元の棚に戻ろうとする。
後ろから手を捕まれて、立ち止まる。
いや……前に進めない。
「あの?まだ、何か?」
「君、バイト?いなかったよね?先週来たんだけど。」
「はい…。夏の間だけです。」
「何時に終わる?良かったら遊びに行かない?」
「いえ…。すみません。仕事中ですので…。」
強めに手を払いのけて、仕事に戻った。
後ろで舌打ちが聞こえて、嫌な気分になった。
「このはさん、休憩取って下さい。」
カウンターから一ノ瀬の声がして、ほっとして部屋に入った。
休憩室に入り、先ずは足を伸ばした。
(ちょっとだけ、横になってもいいかな?)
ゴロンと横たわり、体を伸ばした。
「ん!はぁ〜〜…。疲れた。」
すぐに起き上がり、鞄からお弁当を出した。
丸いちゃぶ台で、小さな声で挨拶をして食事を開始した。
「休憩時間…何分だろう?」
呟くと、横の扉の方から声が聞こえた。
「一時間にしておきましょうか。混雑した時は呼びますが、宜しいですか?」
「ん、はい!勿論です。」
食べ物を入れたまま、慌てて返事をすると、扉の向こうで笑いながら、ごゆっくりと…聞こえた。
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