夏の出逢い

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まほろばは水曜定休。 水曜日、居間のテーブルで宿題を片付けながら、昨日の出来事を振り返る。 何かが、このはの中で引っかかっていた。 (どの本を読むのも自由なんだから、実際、一度目に見た時は横の棚に居たわけだし…。読み進めていると考えれば、偶然、おばあちゃんの本を手にしていた事になる。不思議ではない。) 数学のノートは、クルクルとした落書きになっていて、慌てて消す。 「このは、休憩しないかい?ジュースと大福食べない?」 おばあちゃんが来て、返事をしながらテーブルの上のノートを下に置いた。 「どう?バイトは。」 「うん、楽しいよ?本がいっぱいだし、子供がね、古い漫画を読みに来るの。 座り込んでね。すごい昔なのに、今の子でも面白いのね。」 くすくす笑い、このはは話した。 「面白い物は何年経っても面白いって事だろうね?古い物でもちゃんと残っている物もあるしね。良いものは良い、便利な物は便利、面白い物は面白いと言う事だね。」 「ねぇ、おばあちゃん。進藤さんの女学校時代のお友達ってね、私の友達のおばあちゃんだったの。進藤さんと再会して、まほろばの話を聞いて、本を借りに来てた。病院で仲良くしてた人がいたなら良かったって…。」 「そう…。奇妙なご縁ね?でも、案外、そんな物かもしれないわね? どこかで誰かと繋がっていると言うし、ほら、なんだったかな? テレビでね、言ってたのよ。う〜ん?…………。」 「思い出せないのね?無理しなくても良いよ?」 笑いながらこのはが言う。 「ああ!ほら、そうるめいと?前世からどこかで繋がっているんだそうよ? そうだ、もう一つ思い出した。このは、明日、おばあちゃんに本を借りて来てもらえない?」 「いいよ?題名わかる?」 「ううん、あのね、海の地図みたいなのとか、あとね、船艦の載っている本がいいの。船だけど、戦時中に使われた物が載っている本が見たいの。 難しいかしら?」 「戦時中?戦艦大和なら、学校の図書室にもあるけど?」 「ううん、そんな有名なものじゃないわ。もっと小さいのよ?多分ね?」 「う……ん。良くわかんないけど、探してみる。」 遠い目でおばあちゃんは言った。 無理しなくても良いからと付け足した。
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