夏の出逢い

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その夜、絹枝が部屋で眠りに就いてから、このはは遅く帰宅した父と、少し話をしていた。 「船の本?戦艦大和か?」 このはの父は、食事を取りながら、向かいに座った娘に聞き返した。 「ううん…そんな有名な物ではないって。」 「うん?だけど、当時は大量に船は作られていたんだぞ?飛行機も有名だけど、武蔵、陸奥か?」 「それも大きいでしょ? 私でも知ってる…。小さい戦時中の船って何だろう?」 テーブルのコップにビールを注いで、このはは父の顔を見た。 このはの本好きは父譲り。 父親も小さな頃から本が好きで、このはを小さな頃から図書館や本屋に連れ歩いていた。 「うーん…大きい船じゃないなら、巡洋艦、駆逐艦、油槽船とかかな?」 「なんか、名前は聞いた事ある気がする…けど、何が違うのか分かんない。」 「簡単に言えば、戦艦は戦うために砲台がついてる。大砲だな。 巡洋艦は一回り以上小さい。小回りが利く、見張りとかと例えたら分かりやすいか?」 「見張り…。駆逐艦は?」 「小型の戦艦だな、簡単に言えば。違うのは水雷艇と呼ばれていた事だな。 水雷…んー魚雷を破壊する船だ。だから駆逐艦。」 「お父さん…なんか、複雑になって来たんだけど……。」 呆れた顔でこのはは父を見た。 父は戦艦大和とか、武蔵とか、模型を作るほど大好きだ。 だから、帰宅を待って聞いた訳だが、マニアックになって来た気がしていた。 「有名な大和は大きくて上からどんどんと大砲を打ち、飛行機も落とす。 駆逐艦は海の中を来る敵の大砲を撃ち落とす訳だ。 小さな船って言っても、人員はかなりの人数だぞ? 母さんも俺に言ってくれたら本屋で買ってくるのにな。」 「買うのは悪いと思ったんじゃない?それに仕事中に本屋に行かせたら、仕事しないの目に見えてる。」 と言い、このはが笑うと、父はそれに同意した。
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