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七月始め、テスト期間に入り、午前中で帰宅する。 バスでの途中下車が無理で、かなり店まで歩く為、このはは自転車通学に切り替えていた。 自転車で50分、ただ、店への寄り道は便利だった。 季節もいい季節で、自転車で走ると風が心地良かった。 「まほろば」に顔を出すのはもう6度目。 梅雨明けに教えてもらったから、まだ二週間程しか立っていない。 この店の存在を知ってからというもの、朝は早く学校に行き、図書室で過ごし、昼も同じ。 委員の仕事がある時は店には行かず真っ直ぐ家に帰るが、仕事がない時は帰りは必ずお店に立ち寄る。 図書室にはない本も多し、専門書も多くて興味は尽きなかった。 通い始めると色々な事に気付き出す。 店の和室にいるおばあちゃん達はご近所さん。二軒隣のたい焼き屋さんだったり、裏の鰻屋さんのおばあちゃんだったりする。 昼過ぎから集まりだして、話をしている。 それに意外に子供も多い。 店内の廊下に座って読んでいたりする。 立ち読みも座り読みも注意はない。 だけど、本の扱いには厳しく、一度でも注意を受けた子が同じ事をすると出禁だし、子供には貸し出しカードは作らない。 ただし、一ノ瀬が認めた子にのみ、カードは渡されていた。 この店のルールは一ノ瀬であり、あんな分厚い規約など意味がない様に思い始めていた。
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