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ぼくは毎日深夜0時に家の近くにある浜辺へと行きます。そして浜辺にある綺麗な桜貝の貝殻を必ず1つ拾って帰ることにしています。この生活を初めてから今日で99日目になります。 ぼくがこうして毎夜浜辺へ行っている理由は、どうしても会いたい人が居るからです。いえ、「人」ではないかもしれません。99日前のあの日、何気なく夜の海を見てみたくなりその浜辺へと向かったのです。こんなことをするのは初めてなので記念に貝殻でも拾ってみようと思ってそばに落ちていた1つの小さな桜貝の殻を拾ったのです。 その時、どこからかとても美しくて、しかし哀しくも切なくも感じられる歌声が聞こえてきました。その美しい歌声の主を探すためあたりを見渡すと、海のすこし遠くのところに金髪の美しい少女の姿がありました。人間で言うと17歳くらいでしょうか。その日はいつにも増して大きな満月の夜でした。 美しく澄んでいて繊細な、そして愁いを備えた歌声にぼくは胸を打たれたのです。月の光に柔く照らされたその金色に輝くゆるやかな長髪と、触れると霞となって消えてしまいそうな美しい白肌。魅せられたぼくは、どうしても近寄りたくて海へと歩きだしました。足が水に浸かった時に出た音でぼくの存在に気づいたのか、その美しい少女は歌うのをやめてこちらを向きました。ぱっちりと開かれたその眼は、どんな宝石よりも、どんな一等星よりも、どんな灯台の光よりも美しく煌めいていました。背景の満月の逆光であるはずなのにその大きく見開かれた眼ははっきりと、そうですね……天色よりは蒼く、群青よりは碧い、丁度瑠璃のようななんとも美しい色をしていました。 一瞬の静寂の後、その少女は 「だれ?」 と鈴がりんっと鳴るような声で小さく呟き、海へと潜ってしまいました。 そのあまりにも美しい少女が、美しい日が忘れられず、ぼくはこうして毎日この浜辺へと足を運んでいるのです。
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