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「ねぇ、ママ」
ミカは私を見上げたまま、無垢な表情を向ける。
「少しね、おなか痛くなくなってきた気がする」
そして自分のおへその辺りを見ながら、おなかをさすった。
「ほんと? よかったぁ……!」
もう一度抱き締めてゆさゆさと揺すると、ミカは私の腕の中でくすぐったそうにして「へへっ」と笑った。
よかった。
よかったね、ミカ。
夜明け前の笑顔とホットミルクは、固まった心をほぐしてくれるね。
明日の朝への不安も恐怖も。
体の中に流れ込んで、温かいものに変えてくれるんだね。
ママも初めて知ったよ。
少しずつでいい。
少しずつでいいよ。
すぐに解決しなくていいから。
前に進んで、少しずつ乗り越えていこう。
『心配いらんよ~、だぁいじょ~ぶ~』
深夜3時のテレビから、ショウコの高らかな声。
その口癖ギャグにしちゃったんだ、変なのって、心の中で突っ込みを入れた。
【end】
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